深夜に起こるカギのトラブルの対処はお金がかかる

最後の女の子を自宅前で降ろしてすぐ、その前に送り届けた女の子から着信が入った。無意識に後部座席を確認するも、何もない。車を路肩に停めて電話に出ると、忘れ物ではなく、部屋の鍵をなくして自宅に入れないという。しかたないのでまたその女の子の自宅まで戻った。

キャバクラの女の子の送りのバイトをしていると、こんなちょっとしたトラブルはしょっちゅうだ。女の子たちはお酒を飲んでいるし、仕事あがりで疲れている。また、元々見た目だけは可愛いけど、だらしない子が多いのもこの業界だ。

車を路駐させ、その子の部屋の前に急ぐ。俺の顔を見るとほっとした表情を見せる彼女は、鍵を探すためバッグの中の物をほとんど出して、玄関前の床の上に並べていた。もう一度俺と一緒に鍵がないか確認し、次の対応策を考えることにした。

うちのお店には寮生活の学生さんも多いから、寮なら受付に頼んで鍵を借りるということもできるのだが、彼女は普通の賃貸マンションで、管理人がいるような物件でもない。不動産屋を頼れる時間でもないし、鍵の業者を呼ぶにも、深夜に起こるカギのトラブルの対処はお金がかかる。

以前なら系列店に所属していた俺と同じ送りのバイトをしていた男が、鍵師だったかセキュリティ会社出身だったかで、ちょっとした鍵なら開けてしまうという特技を持っていて、こんなトラブル時にすごく頼れたのだが、もう店を辞めてしまっている。

女の子と相談して、今夜は業者を呼ぶのはやめ、店に戻って更衣室などを探し、それでも鍵が出てこなかったら、改めて明日の日中に鍵の交換の業者を呼ぶことにした。お陰で俺はまた店まで戻らなければならなくなったが、女の子はほっとしたのか、帰りの車内では爆睡していた。

結局鍵は店にあり、業者を呼ぶ必要もなく良かったのだが、鍵を開ける特技があれば、便利だとつくづく思った。